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私は、東大生を長年見てきていますが、常に1~2割ほどの学生は純粋な公共心が強く、国家社会のために働こうという志を持っている。こうした人物が東大内でさらに力を磨いて、社会奉仕に励んで欲しい」(前出・川人弁護士)

東大には与えられた問題を解く能力だけが高い“受験勉強プロ”が多いけど、教養の高い本当の知識人も1割くらいはいる。こうした人材と議論し、将来を語れるのが東大に行く何よりのメリットです。

東大法学部を卒業後、司法試験にも就活にも失敗、現在はフリーターとして暮らすM氏(30歳)が言う。「親にはまだ司法試験の勉強をしていると嘘をついていますが、学生時代の遊び癖が抜けなくて、なけなしのカネでただ飲んでいるだけの日々です。僕の場合、東大に入った時点で完全燃焼してしまった。努力したくないし、頑張る気力もなくなった。自分のせいだとわかっているし、後悔もしています」

今回取材した東大生たちには、「一応、東大です」という言葉を使う人が多かった。がり勉イメージをぬぐい去ろうと、東大生はキャンパスから、そして、勉強から遠ざかるのだ。しかし、「その結果、自分の首を絞めて、大学入学後に極端に学力を低下させている学生が多い」という声もある。

そう語るのは『論争・東大崩壊』の編著者である京都大学名誉教授の竹内洋氏だ。この著作は約10年前に出されたものだが、いまやその『逃走』は当時以上に勢いを増し、本当に教養ゼロの東大生が増えているようだ―――。 東大法学部3年生(21歳)は、身長180cmの美男子。日焼けサロンで焼いたとわかる黒々とした風貌は、いかにも東大生らしくない。彼は、最近まで六本木でホストとして働いていたが、そのきっかけは東大コンプレックスからだった。「うまくやれば『東大だから』、失敗すれば『東大なのに』と、いつも東大生という色眼鏡で見られることが嫌なんです。だから、東大というブランドを外した自分の価値がどれくらいか知りたくて、ホストをやってみた。お客であるキャバクラ嬢やカネ持ちのおばさんたち相手にやる、真剣勝負の駆け引きは本当にエキサイティング。2カ月で月に100万円売り上げるほどになりました」

しかし私の次に、すごく偉い先生が研究の話をしたらブーイングの嵐。つまらない、と。偉くても、今いい仕事をしていないなら容赦なく叩く。これは日本と逆ですよね

「小学2年生の頃、微積分を理解した」という、世界を知る天才肌の研究者である。

機構長の村山斉(ひとし)教授(46歳)が言う。「私の研究テーマは、宇宙の基本法則を見つけること。すでにわかっていることではなくて、現代の人間には何がわかっていないのか、ということを発信したい。そうすれば、若い学生は、もっとワクワクできるんじゃないかな、と」 約10年で合計100億円もの予算が、提案者である村山氏に委ねられた異例の機構だ。「実は提案が通って一番驚いたのは、私でした。どうせ承認されないと思っていたからです。日本は40代の人間にそれだけのお金を任せるような国ではなかったですからね」 何より従来の研究所とはすべてが違う。在籍研究者の約半分は外国人で、議論は英語。上下関係もなく、教授会もなく、文理融合。画期的な研究体制なのだ。 村山教授は東大で理学博士号を取得、東北大からカリフォルニア大学バークレイ校教授などを経て、'07年より現職に就いている。

しかし、東大の新しい試みも始まっている。文部科学省が無作為抽出で世界の研究者にアンケート調査を行った結果、7割の研究者が「ぜひここに行きたい」と答えた研究拠点が、'07年に東大にできたのだ。東京大学を拠点とする数物連携宇宙研究機構「IPMU」

実は東大理系のポストは、欧米の研究者には、『研究キャリアの終着駅』だと思われている。これまで東大の職を求めてきていた人は、欧米では都(みやこ)落ちと思われていました」

博士を活用できるような企業でなければ、先の見えないこれからの時代は生き残れないでしょう」 黒川氏は、東大で博士号を取って渡米、アメリカで研究を続け、UCLA医学部の内科教授を務めた異色の経歴の持ち主だ。グローバルスタンダードを肌で体感しているから、日本のゆがみも見えるという。「東大を始めとして、研究環境がまずおかしい。欧米では博士も、自分の研究室から出た人は採用しないのがルール。いつまでたっても、自立した研究者になれないからです。 そもそも大学は、研究を通して次世代の人材を育てるところ。ハーバードやMIT、中国の清華大学などが世界で評価される理由は、いい人材を輩出する大学だからです。博士を外に出せば、人材が世界に広がってゆき、評判が作られる。でも、日本は教授のクローンを作っているだけで、評判も生まれない。『東大からの人』が活躍できる場が、できていかないのです」

「東大からの人」は、主体性やチャレンジ精神を持ち続けられる人なのだ。

ノルマが厳しくて、学生が過労で倒れ、救急車で運ばれる研究室もあります。

ただし、すべての東大生が、彼女のように意欲的に勉強をこなしているわけではない。授業が多く、思った以上に大変なので、教養課程で落ちこぼれてしまう学生もいる。東大に入ったとたんに燃え尽き、「東大までの人」になってしまうのだ。「まるでカメラのように記憶力がすごい人、数学の新しい公理や定理を発見してしまう人、はたまた、ちょっと信じがたい量の勉強をあっけなくこなしてしまう人。東大に入って自分以上の才能に驚き、自信をなくす学生も少なくない。それで早々と努力をやめてしまい、サークルやバイト、遊びに励んだ学生も、僕のまわりには3~4割います」(工学部3年男子)

理学部数学科4年の栗林司(くりばやしつかさ)氏(22歳)も、世界レベルの人材だ。'05年の数学オリンピック・メキシコ大会では、日本人史上初の満点を記録した。「数学オリンピックは2日間で、合計6問に9時間かけます。東大入試の数学も全6問で、時間は2時間半。忙しいテストですが、東大入試はやはり比較にならないくらいやさしかった。 起きている時間は常に頭の片隅にいくつかの数学の問題をストックしていて、少しずつ考えているという感じです。お風呂に入りながら、『あ、解けた』なんてやっています。 僕は中高と筑波大附属駒場でしたが、中1の頃から数学者になりたいと思っていました。東大に入って良かったのは、同じような考えで入学してくる同級生が結構いることです」

1~2年の教養課程の後に、『進学振り分け』で自分の行きたい学部・学科を選ぶのですが、行き先は2年間の単位の平均点で決まります。医学部、理学部物理学科、工学部航空宇宙工学科といった人気の学部・学科に進学するには、かなり高い平均点が必要です。だから入学したとたん、また受験みたいにハードな勉強生活が始まるんです。 前期では、必修と選択で20科目ほどありました。普段は朝1限から夕方までびっしり授業に出ています。 志望しているのは医学部です。でも、理2から医学部に行くには、ほとんどの単位で90点以上とる必要がある。また、ほかにも可能性を模索したいので、環境やビジネスなどさまざまなジャンルの勉強をする『三文会(さんもんかい)』に入りました。『1年生の女子が積極的ですごいね』と驚かれています。私はチアリーダーをやりたくて応援部に入ったんですが、他のことができないので半年で辞めました」

ならば東大理系出身者によって、続々と世界最先端の研究や技術開発がなされているかと思いきや、思い浮かべてみても、意外と浮かんでこない。 確かに東大OBには、政官財のリーダーたちがずらりと名を連ねる。しかし国を動かす官僚にしても、採用時は文系理系で半々なのに、トップの事務次官の9割以上は東大法学部出身者と、驚くほどの差があるのだ。世界で最も優秀な集団は、いったい何をしているのだろうか。 東大理系の学生を取