kuroishi's Mark

江戸の昔から食通を堪能させてきたからか、ウナギの出てくる小咄(こばなし)は多い。たとえば、ウナギとタコが鞘(さや)袋を拾う。鞘におさめた刀をすっぽり包む細長い革袋だ。それを股引(ももひき)にするから欲しいと、タコが言う▼ウナギは「8本足の1本だけ股引をはいても仕方なかろう」と自分のものにしようとする。タコが「では、おぬしは何にする」と尋ねると、ウナギいわく「かば焼きの時の火事羽織」▼その迷案もむなしい、きょうの「土用の丑(うし)の日」である。ウナギにはご難だが、1年で一番売れる日だ。炎暑の店先にのぼりが立ち、香ばしい匂(にお)いが流れれば、つい行列をしてまで食べたくなる。恒例の「国民行事」に、しかし今年は影が差している▼昨年来、中国産への不信が募っている。あおりで国産は値上がりを続けてきた。そこへ水温を保つ重油代などが高騰し、夏場を前に値は跳ねた。国産にこだわれば、店で食べても自宅で食べても、懐はかなり痛む▼「国籍偽装」の後遺症も残る。〈土用前ウナギの沙汰(さた)に食傷し〉と小紙の川柳欄にあった。だまされた後、「国産」と言われて素直に信じられるかどうか。高値に疑心があいまって、ウナギ離れが起きるのではないか。そんな暗雲が土用の日差しを曇らせる▼小咄の一つに、ウナギを焼く匂いで飯を食う男が出てくる。店の主がお代を求めると、銭の音をチャリンと鳴らし、「匂いのお代は音で払う」。かば焼きが高根の花だったころの笑い話だろう。財布の中身をはかりつつ、国産か否かで心が揺れる夏の一日になりそうだ。

今日もいまひとつ。強いて言えば、 ”ウナギいわく「かば焼の時の火事羽織」” かなぁ。

2008/07/24 09:28:47